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<Diagram 006> 時間および空間スケールによる多様な空間記述仕様の比較

空間の3D記述方式には様々な仕様がありますが、空間および時間のスケールで整理すると、個々に扱うのが得意な領域が存在することがわかります。

例えば、地図領域での空間記述体系であるGISでは、広域の静的な記述に特化した体系で、㎝単位以下の実効的な記述や時間反応性を求められる体系での利用は志向されていません。建築領域で用いられる空間記述体系であるBIMやCIMなどの体系は、㎜単位以下まで扱う性能を持つものの、記述の単位が建設という目的に閉じていて、多様なエージェントの環境認識対応性や更新性は志向されていません。点群はマニュアル入力を経ずに既存の物理世界をスキャンする時に非常に有効でジオメトリの精度も非常に高く設定が可能ですが、データが重くなりがちで属性や階層性の記述を得意としていません。

複数の産業領域ごとに発展してきた3D記述方式が相応の偏向性を持ち、空間と時間のスケールおよびそれに付随する属性記述の志向性において、現状で全領域がカバーされているわけではないことがわかります。特にヒトが日常生活で認識する時間・空間スケール(図中グレーのハッチ部分)に特化して、ミリ秒単位の記述およびマルチエージェントによる可読性、汎用性や各種ライブラリの蓄積、室内外での測位環境との相性などを考慮すると、ゲーム開発に用いられる3D空間記述体系であるゲームエンジンと呼ばれる領域が、ヒト領域でヒトおよび多様なNHAの汎用空間記述に適している可能性が見えてきます。コモングラウンドは、ゲームエンジンをジオメトリおよび属性記述の基礎として用い、基本的なIoTネットワークと連携することを前提とした、人スケール領域での汎用空間記述体系を志向しています。

また上記のように、現状で多様なCPSの空間記述仕様、特に物理世界と情報世界との双方向性を志向する領域への社会的ニーズが増えつつある中で、それらの総体に名称を与え(我々はこの総体をInterspaceと呼んでいます)、個々の仕様の特性を整理し、仕様間の互換性に関する体系化をすすめ、個々のもしくは相互連携のための基礎技術開発を進めることは、関連するあらゆる産業領域を拡張する基礎となります。

 

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