22年4月13日に行われた「INTERSPACE FORUM」のアーカイブ動画がインタースペース研究センターの公式Youtubeチャンネルにて公開されましたので、お知らせさせて頂きます。
動画は各プログラムに分けて公開しておりますので、もう一度ご覧いただきたい内容の確認や皆さまの振り返りなどにぜひご活用ください。
【アーカイブ動画のリンク先ご案内】
①岡部教授(生産技術研究所 所長)開会ご挨拶
https://youtu.be/9nE2BbLvEFs
②PwCコンサルティング合同会社 桂さま開会ご挨拶
https://youtu.be/vpRV0HStZKA
③豊田啓介特任教授 基調講演「モノと情報が重なる共有領域=コモングラウンドとは何か“インタースペース“体系化の重要性」
https://youtu.be/AKqH-Vr9rYI
④三宅陽一郎リサーチフェロー 基調講演「次世代空間記述におけるゲームエンジンの応用可能性」
https://youtu.be/V3Zmzb-TeRU
⑤パネルディスカッション1「デジタル空間記述、価値化における実装可能性と展望」
https://youtu.be/qKzML4qikDs
⑥パネルディスカッション2「次世代汎用空間記述の産業応用可能性とユースケースの在り方」
https://youtu.be/u9O43MjPg2Y
⑦野城教授(インタースペース研究センター長) 閉会ご挨拶
https://youtu.be/av1k5JK4YuY
【フォーラムでいただいたご質問への回答】
なお、フォーラム内で寄せられたご質問につきまして、回答と共に掲載させていただきます。
Q1.非常に大きな価値があると思われますが、この恩恵を得ることのできるステークホルダは誰になるのかが気になりました。誰が主体となって実装を進めていくのが良いのかの含めて回答頂きたいです。
→大きな産業実装の構造と実装と受益の関係が見えにくいので説明が難しいのですが、ざっくりというと、コモングラウンドの具体的なプラットフォーム(CGPF)の実装はあくまでプラットフォーム実装で、それ自体での直接的な受益者は鉄道会社やデベロッパーなど、一部の物理環境管理者になります。そのPF上で多様なサービスを実装するサービサーが多様な領域に生まれることで、各サービスの実装コストがさがり、連携価値が増幅し、サービス実装者とそのユーザーがそれぞれ受益を始めます。さらにはそこで利益がまわるようになることで、PF開発と展開が容易になり、低付加価値もしくは公共サービスにCGPFが使える状況が生まれ、高付加価値に高額課金ができるわけではない層に、社会基盤としてCGPFが使える状況ができる(横展開ができる)ようになると考えています(豊田)。
Q2.コモングラウンドの実装に関して世界に先駆け日本の産業の土台となると終盤にお話しされていましたが、他国との開発競争の観点において、ここ数年(特に万博というマイルストーン前後で)社会実装の勝負どころとなる点はどの様な部分がありますでしょうか?また社会実装を阻む現状の課題はどの点にあると捉えられていますでしょうか?
→短期的かつ短領域的な投資と回収という視点にとらわれないことが重要だと思います。もちろん産業実装をしていく上で、明確に投資が回収できることは大前提なのですが、実感として日本の企業は特に数年単位での回収を担保しようとすることで、複合的な投資で領域全体のパイを大きく育てた上で、そのエコシステムから間接的により大きなリターンを受け取るという類の技術開発や投資がほとんどできていない傾向が強いです。直接の投資はオープンである意味とらえどころのない価値基盤へ行うことで、その先のサービス実装からの実利を大きく増やすためには、日本の場合は特に複数の企業が連携することが不可欠で、企業間連携が苦手ということもまた、解決しなければならない課題だと感じます。その意味で、生研が中立的なメディウムとして果たすべき役割もまたより大きいのかと。(豊田)
Q3.「コモングラウンド」はGIS、BIM、点群データをつなぐインターフェース的な役割なのか、それとも、これらはそれぞれ欠点があるため、これにかわって、ゲームエンジンを使って新しいものをつくろうとしているのですか。「コモングラウンド」は、誰が管理するのですか?施設管理者、それとも国土地理院のような公的期間?
→コモングラウンドは、GISやBIM、点群などそれぞれ独自の記述仕様や得意なスケールがある空間記述体系に対して、それらと並立する一つの記述体系です。ですので、それらの間を取り持つインターフェースではないですし、同時にそれらにとって代わろうとするものでもありません。コモングラウンド自体もヒトスケール、動的記述、マルチエージェント対応に特化するために他の特性を切り捨てる必要があるため、相互に得意な領域での住み分け、および互換機能の開発をこれからしていく必要があります。コモングラウンドの管理主体はまだ何も決まっていません。というか、その開発主体すらまだ手探りの状態です。今想定しているのは、コモングラウンドと呼ぶに足る汎用の空間記述仕様(ゲームエンジンがその基盤となります)を現在CGLLとして開発をリードしている企業連合のコンソーシアム、もしくはその事業継承団体が相応に定義し、より広域の体系との連携調整を行う形です。コモングラウンド自体一つである必要はありませんので、その中でプラットフォーム開発や運営、サービサーとの連携で事業を行う営利目的の事業体は新たにできてくることを想定しているので、そこに多数の既存企業やベンチャーが入ってくるインセンティブをしっかりとデザインしておくことも現在議論されているポイントです。(豊田)
Q4.レイヤー1にセキュリティ、レイヤー2にパーソナルデータやBIMデータ、レイヤー3にアプリケーションなのかな?と思っていますが、BCのアーキテクチャをどのように設計するのがよさそうでしょうか?
→ここでいうレイヤがどの視点でのレイヤなのか次第ですが(コモングラウンドプラットフォーム:CGPFの中には多様なレイヤの構造が含まれるので)、セキュリティとPD、アプリケーションという階層で考えるとすると、BIMを含むジオメトリデータはこれらのレイヤの外側で参照される構造になります。大きくはIoTプラットフォームとジオメトリプラットフォームの二系統に分かれ、主にはジオメトリプラットフォームで空間および形態、それらに付随する属性データを扱い、IoT側で主にセマンティクスを扱います。CGPFはゲームエンジンを基本のジオメトリプラットフォームに採用しますので、BIMはジオメトリプラットフォームのさらに外部参照先になりますし、特にBIMの場合ジオメトリだけでなく独特の属性データ構造も持つので、参照構造は相応に複雑です。仮に都市のデジタルツイン的な領域のデータレイヤの話で、特に基底がセキュリティということをベースに考えると、おそらく第二レイヤは相応に各企業の事業モデルに応じてカスタマイズが可能で、その中にも相応のアプリケーションやセキュリティ情報を含むバリューレイヤとでも呼べる半公開、半クローズドなレイヤ、第三レイヤがむしろ同じ仕様、同じLoDでの公開が義務化されるオープンレイヤとなるような形としても記述できます。まだこうしたデータ構造は絶賛開発中の状態です。(豊田)
Q5.メタバースで経済活動が生まれ、マネタイズが設計されることでさらに人が集まるというお話を聞いて、メタバースがホットになりつつあるのが納得できました。実空間における制約(国ガバナンス、物理パラメータなど)もメタバースには無いのもなるほどと思いました。今後どのような業界でメタバースが進出していくのか(進出しやすい、進出すべきなのか)を伺いたいです。
→メタバースと一口にいっても多様な捉え方や定義がある状態ですので一概には言えませんが、本センターのカバー領域視点から主にデジタル空間を伴う共体験志向のメタバースという前提でお話すると、1.マルチエージェント志向である、2.リアルタイム記述が可能である(必ずしも利用の形がリアルタイムでなくてもよい)、3.没入型である、等は必須の条件になってくるかと思います。まずはバーチャル空間に閉じたゲームという形で利用がすすんでいますが、まずはそれの実空間への接続が、特にエンタメ性が高く実空間のコントロールがしやすい閉鎖型の事例、すなわちアリーナやスタジアム型のスポーツやイベント等で実装が進むことが予想されます。また、どうやってもマルチエージェントの双方向型という仕様上、通信と記述の大域制限がどうしても生じるので、表現と反応性、同時体験人数には相応の制限がかかってきます。そうなると、教室での授業をリモートに没入型で展開する、会議やワークショップなどを没入型で配信するなど、教育系もしくは対面スキルが必要な医療や接客業態での利用も想定されます。人材不足や移動コスト等、喫緊の課題への対策という課題解決型、およびエンタメのような既存の実地体験型の価値を増幅させる付加価値型と、それぞれに複数の適用が今後5-10年ほどで急速に広がるのではないかと考えています。(豊田)